信州佐久地方に残る民俗無形文化財「をどり念仏」を描いた映像詩 ───

”これはこの世のことならず 死出の山路のすそのなる さいの河原のものがたり”

 

ヒューマンドキュメンタリー映画

『をどらば をどれ』1994年/カラー/50分/製作:プロダクション バンブー


Flyer

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Introduction

このお話は お月さまが見ていた絵物語

祈りの をどりの 物語・・・

記録映画とも文化映画ともちょっとちがいます。劇映画というわけでもありません。

まるで、絵物語のような映画です。

それは、ひとときのユートピア。

村人たちは年に一度、夢中になってこの”をどり”を踊ります。

 

「をどり念仏」とは、時宗の開祖・一遍上人によって広められ、

鎌倉時代には日本全国で踊られたといわれる民俗芸能です。

後に能や歌舞伎、日本舞踊、盆踊りなど日本の様々な文化・

芸能に深い影響を与えました。

 

映画は「をどり念仏」発祥の地といわれ、700年にわたってこの踊りを守り伝えてきた、

信州佐久・跡部村での保存会の人々による踊りを記録。

人々の暮らしにも目を注ぐことで、その祈り、生と死、心の平安等にも触れ、

日本人の心の在り処を探りました。

一言で言えば、この映画は、文化財の記録を通じて「心」をドキュメントする映画です。

  

  

出演:撮影:瀬川順一/音響構成:木村勝英音楽:K-seas 伊藤幸毅 木村勝英編集:熱海鋼一ナレーター:相川 浩

ネガ編集:南とめ照明:工藤和雄撮影:柳田義和録音:渡辺丈彦 橋本二三郎

撮影助手:瀬川龍 藤江潔 西牧敏 山田達也 山本大照明助手:柴山克彦 三品宏 井上好英

演出助手:日野れい子 坂場俊哉 浅香修題字:大房鐵陽 東京書道教育会タイトル:菁映社フィルム:日本コダック

現像:イマジカスタジオ:アオイスタジオ照明機材:東洋照明

撮影機材:ナック 科学映画製作所 アティックスエンターテイメント協力:無形文化財跡部踊り念仏保存会 西方寺

資料提供:時宗総本山 清浄光寺・歓喜光寺 東京国立博物館製作:踊り念仏映画製作委員会 プロダクション バンブー

 

芸術文化振興基金助成作品


制作スタッフによるコメント

証拠はなんにもないけれど、

月は事の一部始終をみていたに相違ありません。

瀬川順一(撮影)

証拠はなんにもないけれど、月は事の一部始終をみていたに相違ありません。

私たちは月に問いかけることからはじめました。

700年余りも前に、一遍さんは何故、をどり念仏をはじめたのか。

どのようにそれは守り伝えられて来たのか、そしてその意味は…。

 

その月は月齢十日頃の上弦でした。

半ばふくらみ半ば欠け落ちて、昼を半分、夜を半分、

姿も時刻(とき)も中途半端に空に浮かんでいます。

前々から気になっていたのでした。

 

聞いてください。

相川浩さんの語りが添えられました。

「この映画は、お月さまが見ていた絵物語・・・。」

物語に添えて、美しい絵が穫れたと私は思っているのです。

 

見てください。

月は、映画の空に今も不安気に浮かんでいます。

月とは、宇宙への基地や新たな鉱物資源としてのアレではなく、

昔から空にあるあのお月さまのことです。

 


相川浩(ナレーター)

私はこの映画と出会って、

死ぬことが恐くなくなりました。

”しあわせのようなもの” 

伊勢真一(演出)

それにしても何故、この小さな村にだけ、をどり念仏は残ったのでしょうか。

村人たちは何故、こんな踊りを700年も残したのでしょうか。

我々スタッフが、まるで無知のままに「をどり念仏」に魅かれたように、

妙に難しく考えすぎたりかまえたりせずに、この映画を味わっていただければと思います。

なんだか、なつかしい気分にさせてくれる映画の中の村人たちに思わず、

“しあわせのようなもの”とつぶやいていました。

 


熱海鋼一(編集)

今は聖はいないから、聖のいない聖絵の様に、人の夢の原初の様に、

日本人の原初の様に・・・。

この映画が、ゆったりとした時間の中で語り部となって、

地球を一巡してくれると良いなと思う。

きっと分かちあえるものがいっぱいあるに違いない。

 

そんな風に思っています。

 


木村勝英(音響構成・音楽)

踊り念仏保存会のおばあさんの現地で録ったソロの歌声に、

スタジオで録音した太鼓や鳴り物など別々に録ったものを、

シンクラビアというコンピューターで一緒にするといった工夫など、

たくさんの音創りを満喫し楽しみました。

音楽はふるさとの遠い祭りの思いを軸において

島崎藤村の千曲川旅情と和讃で不思議な世界を、と思いつくりました。

 

 


映画に寄せられた感想

冒頭の子守唄で半年前に亡くなった祖母のことを思いだしました。(母が子育てに熱心ではなかったため、私はおばあちゃん子でした)この村の人たちが少し羨しい。あの舞台に入る瞬間どんな気持なのだろう…「向こうの世界」にいってしまった家族や大切な人たちに少しでも近づいているという気分を感じておられるのか。私はたまに、手の届かない遠いところへいってしまった祖母と母に無性に会いたくなり、夢の中でもいいから会いたいと思うことがあるのですが、よっぽど普段の行いが悪いのかなかなか会えません。

(N.Tさん 26歳 女)

真実の持つ心、情け、日本人のかつての優しさ、その源、貧・死が支える心を伝えていた『をどらばをどれ』万歳!

(S.Kさん 53歳 男)

 

『をどらばをどれ』の河川敷でのシーンと、田植えをする手。それを観ただけで今日は幸せでした。河川敷で踊る老婆の目にきらりと光る涙(泣いているわけではないと思うけれども)生きていることへの喜びと感謝を感じました。

(M.Oさん 28歳 男)